佐久島の素材を使った 無添加ジェラートづくり
もんぺまるけ&くろすけジェラート 神谷 芝保さん
畑で育てた野菜や島の素材を使ったおやつと自家製ドリンクを提供するカフェ「もんぺまるけ」が佐久島の西地区にオープンしたのは、2010年の夏。
オーナーは名古屋から移住した神谷芝保さんです。そのもんぺまるけの敷地内に、2023年の夏、ジェラートを味わえるスペース「くろすけジェラート」が誕生しました。
アイス好きのチャレンジ
芝保さんがジェラートづくりを始めようと思ったのは、「ジェラートでもアイスクリームでも何でも、そもそもアイス全般が好き」だったから。これまでも小さいマシンを使ったアイスをもんぺまるけの店内で出していましたが、何か新しいことにチャレンジしてみたいと思ったとき真っ先に頭に浮かんだのがジェラートでした。
実は芝保さんは、ジェラートかアイスクリームかの選択にはさほど重きを置いていません。もともとジェラートはイタリアで作られたアイスクリームのこと。アイスクリームが工場で生産されることが多いのに対し、ジェラートのほとんどがお店で手づくりされています。
アイスの違いを定めた日本の基準によると、ジェラートはアイスクリームより乳脂肪分が少なく、水分が多くてさっぱりとした口当たりに。空気を含む量も少ないため、素材の味をしっかり味わえるのだそうです。地元の自然の素材にこだわる芝保さんとしては、それをより強調できる方法を選んだということです。
島の素材や自然素材へのこだわり
もんぺまるけでは佐久島の素材や無添加のものにこだわったフードやドリンクを提供していますが、その姿勢はジェラートでも同じ。
「材料には、佐久島でとれたものを中心として、近隣地域の素材も少しおりまぜて使っています。無添加で、安定剤も乳化剤も不使用。そのかわりに島で採れたテングサを使います。そうするとなめらかさが持続するんです」とのこと。
そのテングサも自分で採ってきます。「採るのは簡単だけど、その後の処理が大変!」とのこと。
お話を伺った日のメニューは6種類で、その一部をご紹介すると、「塩ミルク」の塩は芝保さんが冬場に自ら薪ストーブで炊いて作ったもの。「ハブ茶ミルク」のハブ茶は店の敷地内に自生しているものを活用。「柑橘ミックス」は島で採れた各種の柑橘(はっさくや甘夏など)の果汁や味をミックスしたものを使用。苦味や酸味も楽しめる、しっかりとした味わいです。
砂糖も粗糖とテンサイをミックス。さらに米飴(米を糖化させたもの)も混ぜています。少しねっとりしているので、安定剤の代わりになります。「めっちゃ手がかかっているんですよ」と笑う芝保さんです。
52回の失敗を乗り越えて
「アイスクリーム好きだけで始めてしまい、後から知ったことがいっぱい。まずアイスクリームのマシンがこんなに高いってこと知らなかった。アイスクリーム製造業がこんなに大変だってことも知らなかった」と芝保さん。
特に驚いたのは、本土から渡船で運んでもらう生クリームが毎回分離してしまったこと。船の揺れ具合が分離を促進するのにぴったりだったようです。揺れや温度管理に工夫を凝らして、現在はこの問題をクリアしています。
このほかにも様々な困難があり、いろいろ試行錯誤をして、やっとおいしいジェラートが完成するまで、52回もの失敗を重ねました!(失敗数を数えていたそうです)
もちろん、まだ難題はあります。この夏の来島者数が思っていたよりも少なく、ジェラートが思うように売れなかったのです。GWにはお客様が多く訪れたので、夏にも期待していました。
この夏は観測史上でも最高クラスの猛暑で、佐久島に限らず近隣観光地の多くは人出が少なかったようです。量が売れなかっただけでなく、作る量の予測も難しくて頭を悩ませました。
「でも私はジェラートが好き。作るのも楽しい。たくさん作って多くの人に食べていただきたいと思っています!」と芝保さんは語ります。例えば島の民宿で扱ってもらうとか、本土への宅配など、工夫が必要ながらも夢は広がります。
佐久島のおいしさ追求、これからも頑張ってくださいね!
「佐久島での暮らし」に興味がある方は定住促進ガイドをご覧ください。