佐久島ライフレポ Vol.16

まなの風 筒井 敦子さん

 

心も体もほぐれる、

頑張りすぎない時間をこの島で

 

以前は名古屋でボディワーク(ロミロミ、整体)のサロンを経営していた敦子さん。初めて佐久島を訪れた時に「この島に住みたい!」と思い、それから程なくして実際に暮らし始めました。

 

もう少し身軽に暮らしたい!

敦子さんが友人に誘われて春に佐久島へ遊びに来たのが7年前。

たまたま立ち寄ったカフェで「この島っていいな。住みたいな」と口にしたら、お店の人に「店を手伝ってくれるなら、ここの2階に住んでもいいよ」と言われました。

若いアルバイトスタッフが多かったため、その食事のお世話などをする人が必要だったようです。

 

その夏から敦子さんは、名古屋と佐久島半々の生活をスタートさせました。

当時、敦子さんはシングルマザーとしてお子さん2人を育てながら、ものすごく頑張ってサロン運営をしていました。

もう少し身軽に、ゆったりとした気持ちで生活したいと思っていたちょうどその時に、この島と出会ったのです。

 

新しい生活&開業

カフェで働くうち、この島でずっと暮らしたいという気持ちがますます強くなり、島でのサロン開業を考えるようになりました。

やがてカフェのお客さんだった島民の男性と親しくなりました。それが今のご主人である文章さん(漁師)です。「Iターン者として開業するよりは、嫁として島に腰を据え、落ち着いて開業するほうがいいかなと思ったんです」と笑う敦子さん。こうしてめでたく結婚し、お嫁さんという新しい立場になって開業の準備を始めました。

それから1年ほど場所探しをし、現在の家が見つかったのは翌年の秋。もとは民宿だったというこの家は、広々としていて開放的でとても心地よい造りとなっています。母屋も離れもけっこう状態がよくてきれいだったので、入居後に少し整理したり壁を塗ったりしたものの、大掛かりに手を入れずに済みました。母家は生活スペース、離れはお店のスペース(サロンと簡易宿泊所)として使用しています。

そもそも「もう少し身軽に」と思っていたから、仕事はスローペース。「私自身がゆったり暮らしているように、お客様にも船でのんびりこの島へ来て、自然にふれながら心身をほぐして、『本来の自分に出会う』『本当の自分を思い出す』体験をしていただきたいんです」と、敦子さんは語ります。

 

 

暮らしてみてわかる島のこと

この島に住みたいと強く思って住んだ敦子さんですが、住んでから初めて知ったこと、びっくりしたことも少なくありません。小さな離島だけに、島民みんなで助け合うために守ってきたルールもあれば、この島ならではの慣習もいろいろ。都会で暮らすのとは違うお付き合いや決まりごとがあって、「えっ、これってダメなの?」「それが必要なの?」と驚いたこともしばしばです。

 

「頑張りすぎない生活がしたくてこの島で暮らし始めたし、もともと考え方も自由なほうだし、当初はちょっと息苦しさを覚えました」と敦子さん。「慣れるまでには2~3年かかった気がします」でも慣れるにつれ、「自由」って何だろうと考えるようになったそうです。

 

佐久島では都会よりも人と人との関わりが強いから、人の目が気になるなら、都会暮らしのほうが自由に思えるでしょう。でも敦子さんは今好きな場所で暮らし、好きなペースで働き、日々好きなことをしています。

 

気が向いたらいつでもぶらりと海へ行けるって、自由以外の何ものでもないと思うようになったのです。

 

 

新しい家族が心の支えに

そう思えるようになったのは、佐久島で見つけた新しい家族のおかげです。ご主人の文章さんはもちろん、文章さんの家族とも新しい家族になれたことが、強い心の支えになりました。

 

とはいえ、最初から何でもうまく進んだわけではありません。都会でがむしゃらに働いて子育てをしてきた敦子さんと、ゆるりとした時間の流れる佐久島で長年暮らしてきた文章さんの家族とでは生活感覚にズレが生じがちで、関係が少しギクシャクした時期もあったといいます。

 

でも時が経つにつれ、いつしか家族の一員として受け入れられるようになりました。今では「家族っていいな」と心から思っています。

もちろん、敦子さんの娘さんたちも佐久島での暮らしを応援してくれていて、時々島を訪れてのんびり過ごしていくとのこと。

 

 

島でもっと楽しめることを!

このお話を伺った日の午前中、敦子さんはフルートの講師を招き、サロンで楽器の練習会を行いました。こんなささやかな催しでも本土からお客様がやってきますが、島民たちにはこういったお楽しみが少ない気がするそうです。

 

島の外へ出かけて遊ぶことはあっても、島内での日々の遊び、気の向いた人が集まって楽しむ趣味のひととき、そんなちょっとしたお楽しみが広まるといいなと、敦子さんは思っています。

敦子さんは「島の漁師たちはとてもよく働きます。若い人はもっと遊びたいしあれこれやってみたいと思っているのに、体がついていかないという感じ」だと言います。自分の仕事のことはすごく考えているけれど、これからの時代のことや島全体のことまで考える余裕がなかなかないようにも見えます。

 

一人ではできないことも、若い世代の人が力を合わせれば一歩ずつ進めるかもしれません。でも心身に余裕がないとそれは困難。島民みんながもっとゆとりを楽しめるようになるといいですね。

 

 

「佐久島での暮らし」に興味がある方は定住促進ガイドをご覧ください。

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