アーティスト 南川 祐輝 さん
- 投稿日時:2024年12月8日
- カテゴリー:アーティストレポート, イベント&レポ一覧, 最新情報
二十歳になったおひるねハウス
佐久島アートを代表する人気作品の一つ「おひるねハウス」が、2024年秋に20周年を迎えました。その記念イベントとして、おひるねハウスグッズがもらえる福引きや、佐久島では祭りやお祝いごとに欠かせない餅投げを開催。お餅を投げる役目を担った作家の南川祐輝さんに、二十歳になったおひるねハウスについて、お話を伺いました。



木製作品にはきめ細かなメンテナンスが必要
おひるねハウスが最初に登場したのは2004年の秋です。屋外(しかも海辺)に設置された作品なので、耐用年数はだいたい10年ぐらい。当初から、基礎など一般の人がわからないようなところを少しずつ補強してきたそうです。さらに大きな改修を2回実施。2013年と2023年の再建です。再建期間中はおひるねハウスが二つ並ぶ不思議な光景も見られて、話題になりました。

「大袈裟な例えかもしれませんが、伊勢神宮が20年に1回式年造営を行っています。そのようなイメージかな」と南川さん。伊勢神宮は社殿を新しく造り替えるのですが、その理由の一つは、地面に穴を掘ってそのまま木の柱を立てる建造物の寿命がそれぐらいだから。おひるねハウスも木造で、基礎にコンクリートなどを用いているわけではないため、定期的な修理が必要になるのです。
最初は5年ぐらい保てばいいという企画だったようです。なにぶん軟弱な砂地盤で、海風の吹き付ける浜ですから、土台はある程度しっかりと築きました。それでもこんなに長い年月にわたって見ていただくことは想定していませんでした。

ところがおひるねハウスができて2~3年経った頃から来島者が増え始め、若い人を中心にアート散策をする人たちが多くなっていきました。こうして、建て直しを含む大小のメンテナンスを繰り返すようになったのです。

2回目の再建は基礎をより頑丈にしたので、これまでより長持ちしそうだとか。南川さんはもともと建築家ですから、建造物の構造に関してはプロ。さらにこの20年間で培った技術やノウハウを活かすことで、「人の目には見えない部分がかなりバージョンアップした」とのことです。
アーキテクト&アーティスト
南川さんと佐久島との関わりは21世紀の初めから。個人的にアートが好きで、それ以前から岡崎市内にあったアートギャラリー(今は閉廊)によく出入りしていました。そこで現在の佐久島アートのディレクターと知り合い、おひるねハウスの企画が立ち上がったのだそうです。

「私自身はもっぱら建築家(アーキテクト)として活動していて、アーティストとしては有名ではありません。おひるねハウス(及びイーストハウス)は多くの人に知られるアート作品になりましたが、その作者が誰かを知っている人は少ないと思います。私とは関係なく、純粋に建造物(作品)が面白いから見に来る人がほとんど。なんだか他人事みたいですね」と、南川さんは笑います。

建築家ですと言いつつも、芸術大学の美術学部彫刻科で10年以上教鞭をとっていた南川さん。建築科の学生と彫刻科の学生が一緒のフィールドで学ぶ機会があり、そのとき両者の違い(例えば建築科の学生はプレゼンテーションが上手だが、彫刻科の学生は下手など)を感じ、相互に学び合い、利点を補い合えるのはいいことだと実感したそうです。建築家とアーティストの2つの視点を持つ、南川さんならではの考え方ですね。

