アーティスト・レポ


フォトグラファー
たないりほ(Riho Tanai)さん

 

たった1枚の写真から、

その瞬間の情景が浮かぶしあわせ

 

 

2016年は、佐久島弘法がつくられてから100年となるメモリアルな年。林の中や黒壁の集落のそこかしこにたたずむ弘法さんの祠をたどれば、島の暮らしや自然、歴史や文化を体で感じることができます。

そんな「弘法みち」で出会った風景や人を、フォトグラファーの たないりほ さんがやさしい眼差しで写し出しました。その作品たちを、4月23日から7月3日まで弁天サロン内ギャラリーで展示。開催初日の4月23日には、たないりほさんを囲んでのお茶会も行われました。

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そのときの匂いや音まで思い出す写真

 

写真を撮り始めたのは20代からという、たないさん。自然の風景を撮ることからはじまり、徐々に人を撮ることが増えていったそうです。デジタル一眼を使うようになったのは、娘さんが誕生してからとのこと。

たないさんの作品は、人のいない風景写真にも人の気配が感じられます。娘さんを写した写真から愛しさがあふれ出しているように、風景の背後にいる人たちに対するたないさんの想いが、自然ににじみ出ているのでしょう。

「写真は撮る人と撮られる人、両方の想いが写るのではないかと思います。だから私は、自分が穏やかでやさしい気持ちのときにしか写真を撮りません」とたないさんは言います。同じ風景を同じカメラで、全く同じ設定で撮っても写真が毎回変わるのは、自分の心の状態がそのときどきで違うから。さらに、全く同じように見えても風景や人は生きていて、やはり刻々と変わるからです。「場所の空気が写るんです」とたないさん。だからこそ、すてきな瞬間を写したいという想いがつのるのです。

「写真は一瞬を切り取ったものかもしれません。でもその一瞬の煌めきをとらえた写真を見れば、そのときの匂いや音や心情までが鮮やかによみがえります。大切な思い出が1枚の写真で浮かび上がってくる。幼すぎてよく覚えていないことも、たった1枚の写真によってイメージが広がる…そんな1枚を撮りたいなって、私はいつも思っています」と語るたないさんです。

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穏やかな佐久島時間を楽しむ

 

佐久島の弘法みちを写したたないさんの作品には、どれもふんわりとした空気がただよっています。見ているだけで、あたたかい風が吹いているのが感じられます。佐久島に対するたないさんの印象をお聞きしました。

「のんびりしていて、とても穏やかな空気が流れているところ。寒い時期に初めて来たんですけど、さほど寒くなく、緑が多いのに驚きました。それから数回訪れて、だんだんと暖かくなっていくのを体感。最初はサザンカ、そしてスイセンやツバキ、ハマダイコンと、花々も移ろっていきました。弘法みちには昔ながらの弘法さんの祠も新しいアートな弘法さんも点在し、風情があります。山道を歩くのはそれなりに大変だけど、歩かないと気付かないことがいっぱい。小さな草花や鳥の巣、自転車では見落としてしまいそうな可愛らしいものや美しいものがたくさんあります。そんな光景をぜひ、のんびり歩きながらみつけてほしいなと思っています」

穏やかな空気がふわふわ漂った、そして島びとたちの横顔がさりげなく写った、自然体の佐久島の写真の数々。写真を見てから弘法道を歩くか、歩いてから写真を見るか、あなたはどちらにしますか?

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