アーティスト・レポ


版画家
猫野ぺすかさん

 

ありそうでありえない、

独自のファンタスティック・ワールド

 

佐久島弁天サロン内に、ちょっぴり不思議な版画が飾られています。描かれている風景に目を凝らすと、あらっ、どこかで見たような景色…なんとなく佐久島に似ているような…。でもその風景の中にたたずんでいるのは、実際にはそこにいるはずのない動物たち。ありそうでありえない架空の世界が絵の中に広がっています。

これが、猫野ぺすかさんの描くファンタスティック・ワールド。2007年には『遠い未来の 懐かしい記憶』と題した展覧会と消しゴムはんこのワークショップを、また2010年にはあいちアートの森/佐久島プロジェクト「佐久島・雛のまつり」を、そして2011年には「佐久島・鯉のぼり展」を、それぞれ佐久島で開催した猫野ぺすかさんが、2016年の今年、9年ぶりにまたこの島で消しゴムはんこのワークショップを行いました。

 

hanko1

hanko2

 

 

アイルランドがアイルリンドになった瞬間

 

子どもの頃から動物とファンタジーが大好きだったというぺすかさん。特にナルニア国物語や指輪物語の壮大なイマジネーションの世界に魅了され、すっかりハマったそうです。「想像力って、人間が持ついちばんの武器だと思うんです」とぺすかさんは言います。その武器を駆使して自ら現在のような作品を作るようになる前、ぺすかさんはあるアーティストと出会いました。そのアーティストとは、2006年にこの佐久島で個展『返礼』をおこなった内藤礼さんです。

ぺすかさんと内藤さんは同じデザイン事務所でアルバイトをしていたのだそうです。それがご縁で展覧会アシスタントをするようになり、1997年には、内藤さんがヴェネツィア・ビエンナーレに出品する際のスタッフとしてイタリアにも同行。アートを国際的な現場で体感しました。

その後は写真や絵本について学びながら、イラストを描く仕事にいそしみました。家庭の事情で一時期仕事を離れたのち、新たにチャレンジしたのが版画です。独学で版画づくりに没頭したといいます。

そんなあるとき、アイルランドを巡った際に撮った写真にペンギンの絵を重ねて、版画にしてみました。想像の世界とリアルな世界が融合した瞬間、「私、こういうのがやりたかったんだ!」と実感。それからはさらに夢中になって作品をつくりました。それが、現在ぺすかさんのライフワークともなっている「アイルリンド」のはじまり。2004年のことです。

“すぐそこの、むこうがわ”というのが、ぺすかさんが描くアイルリンドのイメージ。「この世界と似ているけど、何かがちょっと違う。人間の子どもも、ふとそこに迷い込んだりします」とのこと。少し奇妙だけれどどこか懐かしい…そんな世界を描き続けています。

pesuka

 

 

佐久島と猫と消しゴムはんこ

 

ぺすかさんは、2006年の展覧会関連企画として内藤礼さんと中沢新一さんによるトークイベントが行われたとき、初めて佐久島に来島。それを機に、ご自身も佐久島アートと縁を結ぶことになりました。翌2007年には、佐久島弁天サロン内のギャラリーで猫野ぺすか展『遠い未来の 懐かしい記憶』(アイルリンド in 佐久島)の開催が実現。このとき展覧会に先がけて、消しゴムはんこのワークショックも行いました。これが初めてのワークショップだったとのことで、かなりドキドキしたそうです。いろいろな意味で、佐久島はぺすかさんにとって忘れられない場所のようです。

消しゴムはんこをぺすかさんが手掛けるようになったのは2006年から。版画家がつくる消しゴムはんこにはひと味ちがう魅力があり、作り方や図案を記したぺすかさんの著書も複数出版されています。(「はじめてつくる消しゴムすたんぷ」ナツメ社 など)

今年のワークショップのお題は、ぺすかさんのお名前の一字でもある「猫」。猫がいっぱいいることで知られる佐久島ならではのテーマでした。参加者のみなさんは、ぺすかさんのつくった猫ハンコを参考にしながらキュートなはんこづくりを楽しみました。

 

hanko3